秩父札所の道しるべと幟|巡礼道に残るしるしの記録

秩父札所三十四観音霊場

秩父札所三十四観音霊場の巡礼道には、たくさんのしるしが残っています。江戸時代に建てられた石の道しるべ、秩父市と秩父札所連合会が立てた標識、地元の方が板に墨で書いた手書きの案内、山道の木に結ばれたテープ。作られた時代も、立てた人も、素材もばらばらです。古い石の道しるべは、もう文字が読めないものも多くあります。それでも道の角に立ち続けているのを見ると、歴史を感じます。

もう一つ、道でよく目につくのが幟(のぼり)です。秩父札所連合会の幟には、「奉納 南無聖観世音菩薩」「秩父札所三十四箇所」と染め抜かれています。ほかにも、文面の異なる幟がありました。お寺の入口や石段、観音堂の前に立っているので、遠くからでも「ここだ」とわかります。

色は緑・黄・赤・白・紫の5色です。どれも同じ文面で、1本ずつ色が違い、石段に並ぶと色の列になります。

このページは、2026年10月に34か寺を歩いて結願したときに撮った24枚を、しるしの種類ごとに分けて並べた記録です。道案内ではありません。どこを曲がる、何メートル先、といったことは書いていません。札所から札所への道順は、公式の案内や地図をご覧ください。

では、なぜ写真をまとめたのか。それは、巡礼道にあるさまざまなしるしを、あらかじめ知っておいていただきたいからです。

秩父の巡礼道では、しるしが一種類ではありません。新しい標識を探していると、足元の苔むした石を見落とすことがあります。反対に、石の道しるべばかり気にしていると、木の幹に留められた小さな札に気づかないこともあります。写真で見ておけば、現地でも目に留まりやすくなるかもしれません。

巡礼道には、住宅がなく、人にもなかなか会わない山道もあります。私自身、目印を見失って不安になったことがありました。写真でしるしの種類を知っておくことが、現地での安心につながればと思います。

もう一つは、記録としての役割です。手書きの板は傷めば書き直され、石は倒れれば片づけられます。2026年にこの形で残っていた、という記録です。

歩く方はもちろん、車で回る方、これから秩父を歩こうか迷っている方にも、見ていただければと思います。

巡礼とわ(筆者)のポイントメモ

1番から2番への舗装路の急な坂道は、いくつもの道標が続きます。次々に見えるので迷わずに登っていけます。そして、歩くのにも走るのにもキツイポイントとなる箇所には、『がんばって、札所2番まであと500m』と太めのマジックペンで書かれた板が柱に括られています。一人で巡っているわけではないな、という気持ちにさせてくれます。

27番では、山門をくぐったところに本堂がありますが、その先の丘の中腹にあるのが観音堂です。観音堂の横にたっている観世音菩薩の幟が私を誘導してくれました。

31番から32番へ向かう大日峠越え山道の巡礼道で、目印を見失いました。何度も左右の尾根や沢を見て、来た道である後ろを振り返り、そして、沢を渡ってよいのかと迷い、ちょっと怖い思いをしたことがあります。その時には、赤い観世音菩薩の幟とピンクテープが目印となって、道案内をしていただきました。暗くなる前の32番山門を見れた時には、感謝の気持ちでいっぱいでした。

道しるべ石が古く、文字が読めなくなっているのもありました。隣にその石の解説板があって、どうやら、その石は17世紀末から18世紀はじめのもののようです。その解説板も古くなっていて、横には新しい秩父札所の札が立っていました。とても古い石、古い解説板、そして新しい札の3つが並んでいます。

25番から26番へ、荒川の橋までののどかな道のりでは、巡礼道の道標が少し見つけづらい箇所があります。道に迷って立ち止まっていると、地元の方が「そっちだよ」と笑顔で声を掛けてくださいました。地元の方々の温かさをひしひしと感じました。

古い道しるべ石から現在の標識や幟まで、時代ごとのしるしが巡礼者の道を支えてきたのだと感じます。そして、地元の方々の声掛けも、道に迷ったときの不安を和らげてくれました。

江戸期の道しるべ石

分かれ道に立つ道しるべ石(撮影:2026年10月)
分かれ道に立つ道しるべ石(撮影:2026年10月)
「札所めぐり道」と刻まれた面(撮影:2026年10月)
「札所めぐり道」と刻まれた面(撮影:2026年10月)
解説板の立つ道しるべ石(撮影:2026年10月)
解説板の立つ道しるべ石(撮影:2026年10月)

傍らの解説板には、この道しるべ石について次のように記されています。

  • 名称:巡礼古道 道しるべ石
  • 願主:心求(高橋㐂兵衛)・はま
  • 年代:1688年〜1711年(元禄・宝永年間)
  • 小字:石順礼みち
「道しるべ石 26番⇔25番」の木札が添えられた道しるべ石(撮影:2026年10月)
「道しるべ石 26番⇔25番」の木札が添えられた道しるべ石(撮影:2026年10月)

秩父市と札所連合会の標識

お堂をかたどった「巡礼道」のマークが入っています。

「江戸巡礼古道 Chichibu Edo Period Pilgrimage Route」の標識(撮影:2026年10月)
「江戸巡礼古道 Chichibu Edo Period Pilgrimage Route」の標識(撮影:2026年10月)
巡礼道のマークが入った道路沿いの標識(撮影:2026年10月)
巡礼道のマークが入った道路沿いの標識(撮影:2026年10月)
1本の柱に標識が重なって付けられた場所(撮影:2026年10月)
1本の柱に標識が重なって付けられた場所(撮影:2026年10月)
観光用の指差し標識と、その手前の古い石の道標(撮影:2026年10月)
観光用の指差し標識と、その手前の古い石の道標(撮影:2026年10月)

手書きの板

木目の浮いた古い板に墨で書かれたもの(撮影:2026年10月)
木目の浮いた古い板に墨で書かれたもの(撮影:2026年10月)
道ばたの大きな白い板(撮影:2026年10月)
道ばたの大きな白い板(撮影:2026年10月)
屋根の付いた板(撮影:2026年10月)
屋根の付いた板(撮影:2026年10月)
「江戸巡礼古道」と書かれた板(撮影:2026年10月)
「江戸巡礼古道」と書かれた板(撮影:2026年10月)

木の柱の道標

丸太を立てて、側面に文字を彫り込んだものです。「秩父市」の銘が入っています。

上部を切り直してある木の柱(撮影:2026年10月)
上部を切り直してある木の柱(撮影:2026年10月)
三つの面に行き先が彫られた木の柱(撮影:2026年10月)
三つの面に行き先が彫られた木の柱(撮影:2026年10月)

木に付けた目印

山道では、木に直接しるしが付けてあります。テープは巡礼道の目印ではなく、道そのものの目印です。その道がたまたま巡礼道だった、ということになります。

杉の幹に針金で留めた「秩父札所」の札(撮影:2026年10月)
杉の幹に針金で留めた「秩父札所」の札(撮影:2026年10月)
杉の幹に結ばれたテープ(撮影:2026年10月)
杉の幹に結ばれたテープ(撮影:2026年10月)
岩の上の枝に結ばれたテープ(撮影:2026年10月)
岩の上の枝に結ばれたテープ(撮影:2026年10月)

秩父札所連合会の幟

石段や参道に立っています。緑・黄・赤・白・紫の5色があり、どれも同じ文面です。

項目内容
文面奉納 南無聖観世音菩薩
脇書き秩父札所三十四箇所
立てた団体秩父札所連合会
色緑・黄・赤・白・紫の5色
紫の幟(撮影:2026年10月)
紫の幟(撮影:2026年10月)
白の幟(撮影:2026年10月)
白の幟(撮影:2026年10月)
赤の幟(撮影:2026年10月)
赤の幟(撮影:2026年10月)
黄の幟(撮影:2026年10月)
黄の幟(撮影:2026年10月)
緑の幟(撮影:2026年10月)
緑の幟(撮影:2026年10月)
石段に5色が並ぶ(撮影:2026年10月)
石段に5色が並ぶ(撮影:2026年10月)

連合会のものとは別に、文面の違う幟もあります。

「奉納 南無観世音菩薩」の赤い幟(撮影:2026年10月)
「奉納 南無観世音菩薩」の赤い幟(撮影:2026年10月)

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